治療最前線インプラントニュース

がん治療にあたっての口腔ケアの必要性について[日経新聞 2010年9月1日号]

独立行政法人国立がん研究センターと日本歯科医師会は8月31日、がん患者の口腔内の合併症を予防・軽減するため、連携して手術前の患者に口腔ケアを提供することを盛り込んだ合意書を取り交わした。2013年度までに、全国のがん診療連携拠点病院と地域連携歯科医療機関の連携体制の構築を推進していくことを目指す。
来年度以降は、化学療法や終末期医療の患者を段階的に対象に加える。また、全国のがん診療連携拠点病院などにも連携体制の構築を呼び掛ける。
がん患者に歯科治療やブラッシング指導を提供することで、口腔合併症の軽減や肺炎の予防などにつなげる。その結果、がん治療そのものの質の向上が望めるといい、同センターの嘉山理事長は同日の記者会見で、「日本全国に広げていきたい」と強調した。会見には、同センターでがん治療を受けた患者も出席し、「がん患者が安心して歯科治療が受けられるよう、(今回の試みを)広く伝えてほしい」と訴えた。

同センターと日歯が作成した事業計画書によると、同センターで手術を受ける患者はまず、手術日が決定した段階で、連携に参加する専門的知識のある歯科医によるブラッシング指導や口腔ケア、歯科治療などを受ける。がん患者はその後、手術に臨み、退院後も必要であれば継続して口腔ケアや歯科治療を受けられるように同センターと連絡を取る。

口腔外科専門医[週刊朝日 2009年5月29日号 掲載]

口腔外科では、舌、口、顎などの口腔顎(がく)顔面領域の主に外科処置を行っており、診療対象となる疾患は大変幅広い。近年急増している顎関節症やインプラント治療、顎変形症、唇顎口蓋裂、外傷なども口腔外科の診療領域だ。また、舌がんや歯肉がんなどの口腔がんの早期発見にも頼れる診療科だといえる。

社団法人日本口腔外科学会では、こうした高い専門性が求められる口腔外科領域の疾患治療のスペシャリストとして、「口腔外科専門医」を認定している。
厚生労働省では、2002年4月から、医師及び歯科医師の専門医資格を認定する団体に対して、 「基準を定めて、その基準に適合した学会の専門医資格に限り」広告することを認めている。

専門医の資格取得のためには、100例以上の執刀経験や入院患者50症例以上の診療経験、論文・研究業績など、さまざまな厳しい条件を満たした上で、筆記と口述試験に合格しなければならない。

同学会では、専門医の資格条件や審査のハードルをこれまでより高いものに改め、昨年4月より新制度をスタートさせており、専門医のさらなる発展と水準の向上が図られている。

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インプラント治療最前線 [朝日ジャーナル 2009年4月14日 掲載]

虫歯や歯周病などで大切な歯を失ったときの治療の1つとして、顎の骨に埋めた人工歯根を土台に人工の歯を固定するインプラント治療が挙げられる。顎にしっかりと固定され、本来の歯に近い感覚を取り戻せるため、第2の永久歯ともいわれるものだ。多くの歯を失った人の治療も可能にするなど、現在も適応範囲は広がっている。

さまざまな利点を持つインプラント治療
歯を何らかの原因で失った場合、そのままでは両隣の歯が抜けた箇所へ傾いたり、歯を支えていた顎の骨がやせたりする。そうしたことを防いでかみ合わせを保つため、歯を補うさまざまな治療が必要になる。中でも注目されているのが、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め、それを土台に人工の歯を固定するインプラント治療だ。
チタンは骨と結合する性質があり、材料として用いることで人工歯根を顎の骨に固定できる。それにより、天然の歯に近い感覚でものをかめるほか、隣の歯に負担をかけないで済む、顎の骨に刺激を与え続けることで骨がやせるのを防ぐなどの利点が得られる。

インプラント治療の流れ 診断から治療後まで
治療は時間をかけて段階的に行われる。まず、カウンセリングや診断によって治療計画を立て、続いて人工歯根を埋め込む手術を行う。手術後は数カ月の期間をおいて人工歯根と骨が結合するのを待ち、人工の歯を取り付けて治療が完了する。インプラントの周囲に炎症などを起こして人工歯根が抜けることもあるため、治療後は定期的なメンテナンスが必要だ。
治療には保険が適用されず、費用がすべて自己負担になる。一般的に1本あたり30~60万円程度かかるが、手入れをきちんと行っていれば半永久的に使え、何度も治療しなおす必要もない。

技術や機器の進歩により多くの症例に対応
現在のインプラント治療は、技術や機器の進歩などにより、多くの症例に対応できるようになった。例えば、すべての歯を失った人は、本来なら 10~14本のインプラントが必要になるが、最小4本のインプラントで総義歯を支えるオールオン4なら、埋める本数が抑えられ、短期間かつ比較的安価で治療が可能だ。すでに顎の骨が十分にない場合でも、症状次第で骨移植や骨補填材によって骨を補った後に手術を行える。
こうした新しい治療法に限らず、インプラント治療は口腔外科の専門的な知識、高度な手術技能が必要になる。長期にわたって口腔内の健康を維持するためにも、多くの情報を集めて専門性の高い歯科医を選ぶのが望ましい。

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